この日の杉本監督の舞台挨拶は、上映前の短い挨拶と、上映後の内容に触れたトーク&質疑応答という形で行われました。

2月21日土曜日 いよいよ今日から『自転車でいこう』のモーニングショーが始まる。気持ちのいい青空が広がり、シネマスコーレの周りはいつものように朝市が並び、たくさんの人たちで、賑わっている。つい先日決まったばかりで告知もままならない初日の舞台挨拶に駆け付けてくれた杉本信昭監督は、「いい所ですね。」と。本当にそうだ。そしてこの映画にはぴったり。
この急遽決まった初日舞台挨拶を聞きつけて来てくれた人、そうとは知らずに『自転車でいこう』を心待ちにして来てくれた人とがまじった場内に、強面な印象の杉本監督入場。「始めに映画の中のこのへたなナレーションの声はいったい誰なんだ?と思う人がいると思いますが、これは僕です。」わくわくと少し緊張した面持ちのお客さんたちの顔がほころぶ。
 

さあいよいよ上映開始だ。
自転車に乗って大阪・生野区を走るリ・プーミョンという自閉症の男の子を追っかけた115分。お客さんは、どう感じただろう?
杉本監督「家どこ-?って突然リー君の方から話しかけてきた。家、東京の新宿。それから話をしてすぐリー君を撮ろう!って決めてました。そして10日後には、撮影の準備をして生野に戻っていました。撮影隊は、始め自分を含め3人。で、途中から飲み屋で知り合った大阪の女の子が加わって4人で、リー君の後を自転車で追っかけて撮影しました。最初は生野の町もよく知らず、どこに連れて行かれるか毎日不安でした(笑)。」
 
   
  リ・プーミョンは障害を持っている。そのことに対して健常者がかってに抱く同情心や、関係性を結ぶのが困難なのではないかというような先入観に対しては、「なんにもなかったですね。なぜかというとリー君がそういったことを飛び越えっちゃっていた。逆にリー君に遊ばれた。」と笑って話す。「映画の中でじゃがいも子供の家のスタッフが「付き合ってみる」と言っていたけれど、まさにその言葉どおり。付き合ってみることで人は結びつき、関係が出来る。」お客さんの一人が、”人にやさしくすること”を感じたと話してくれたが、本当に人と人との関係が愛情と信頼によって結ばれていることを感じる映画である。
 
     
             
  そしてリ・プーミョンと監督、この映画に出てくる人たちと監督の間には、しっかりとした信頼関係があるのだろうなと感じずにはいられない。監督も「付き合いはこの先ずっと続いて行くと思います。じゃがいも子供の家の子たちは夏のスタッフに、僕の名前をもう入れていました。」とはにかんで話してくれた。監督のトークを聞き入るお客さんも監督の人柄を感じ取ったことだろう。
舞台挨拶を無事終えた杉本監督は、スコーレスタッフ他、数名のお客さんとともに質問責めにあいながら昼食を終え名古屋を後にしました。
杉本信昭監督ありがとうございました。

柴田ヒロコ でした
   
                 
   

 杉本信昭監督プロフィール

1956年 新潟県新潟市生まれ
1977年 法政大学中退
1981年 東陽一監督・前田勝弘プロデューサーの主催する幻
     燈社で助監督をつとめる
1996年 大阪市生野区を訪れるようになる

■主な映像作品
1987年 ドキュメンタリー映画「蝶が飛ぶ・森」(幻燈社製作・配
      給・文部省特選)
1988年 「てなもんやコネクション」(山本政志監督)助監督
1991年 「東京の休日」(長尾直樹監督)助監督
1992年 ドキュメンタリー映画「蜃気楼劇場」(スタンスカンパニ
      ー製作・配給)
      川崎市市民ミュージアム展示映像 神奈川県川崎市
1993年 吉野作造記念館展示映像 宮城県古川市
      日光自然博物館シアター映像 栃木県
1994年 水の資料館展示映像 香川県
1996年 劇映画「ドッグス」(長崎俊一監督)プロデューサー
1998年 紀伊国屋「図書館の達人シリーズ」(教育映画祭優秀作     品賞)
1999年 岡本太郎美術館展示映像
2000年  WOWOW「映画と歩く」シリーズ
2001年  インターネット博覧会 ディレクター
2002年 三内丸山遺跡シアター映像 青森県
     中央出版「マザーグース・ワールド」総合監督
2003年 ドキュメンタリー映画「自転車でいこう」

『自転車でいこう』ホームページより転載